『海賊戦隊ゴーカイジャー』に見た大勢を特撮に引きこんでくれる可能性の話

緊急事態宣言で在宅を基本とする最中、こんな発表があった。

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どうやら無料配信は初とのことで、この機会にぜひ見てほしい…と特撮勢が沸き立った。
ほかの作品に対してもそういう布教活動は見られるが、昨日の発表時の色めき立つ様子は異様だったように思う。
そして、私も鼻息を荒くする一人だ。なにせ、『海賊戦隊ゴーカイジャー』の布教は、『ゴーカイジャー』だけを広めるにとどまらない。『スーパー戦隊シリーズ』全体のファンを増やしてくれる作品に違いないからだ。
未来のために、『ゴーカイジャー』を広めよう。ぜひ賛同してほしい。


ゴーカイジャー』はそれまでの34戦隊すべての姿に変身することが出き、時にはかつての作品でメンバーを演じたいわゆる「レジェンド」の出演もある。それまで何か1つでも戦隊シリーズを見ていた人にはその要素だけでも刺さる。かつて応援していた戦隊が、何かの形で顔を出す。かつての応援したヒーローとの期待された再会とその懐かしさ。
だがそれはあくまで1つでも見ていた人の話。私は「ゴーカイジャーファン」ではなく「シリーズファン」を増やせると書いた。


2011年放送当時、私が見ていたスーパー戦隊はリアルタイムで見ていた平成のものだけだ。『侍戦隊シンケンジャー』以降は毎年見ているが、それ以前には数年のブランクもある。放送開始前に期待していたのは、幼少期に見ていた作品群の活躍が中心であり、その他の作品は興味を持つきっかけになってくれるだろう、という程度だ。

しかし、そうして迎えた第1話。全く予想していないことが起きた。

初変身からの戦闘開始。事前情報であった他の戦隊の姿にはなかなかならず、「ゴーカイジャー」としての戦闘スタイルをしっかりと見せていく。共通する武器の使い方が個性によって違う、と1人ずつのアクションをていねいに描くカットが続く。そして満を持して歴代の姿に変わる。変身アイテムから響く声。


「ゴォォォレンジャー!!」


並び立つ「秘密戦隊ゴレンジャー」の姿を見た、そのときだ。
なぜか目頭が熱くなった。
そして再現される必殺技ゴレンジャーハリケーン。涙をこらえながら見る。
―繰り返すが、ゴレンジャーは当時見ていない。思い入れがあるわけでもない。
にもかかわらず、何か魂が震えたらしい。正直今でも理由はわからない。脳がバグったかと思った。
1話において元祖を、必殺技まで再現しようとするあのシーンに、感じるはずがないのに感じた懐かしさ。
なお、これを書きながら試しにもう一回見てみたがやはり同じシーンでクる。この年からの公式配信で『ゴレンジャー』を見終わった今、二度目であっても強く響く。


一応、子どものころからずっと読んでいた全戦隊が載っている超全集なんかは何度も読んでいたし、全主題歌の入ったCDは何度も聞いていたなど、『ゴレンジャー』に対して全く何も知識がなかったわけではない。

だから、万人にこのシーンが刺さる、とは思わない。しかし、あの俳優が出ているらしい、とか、なんか子どものころに少し見たことがある気がする、とか、その程度のかすかな『戦隊シリーズ』とのつながりでも、きっと『ゴーカイジャー』なら、きっとどこかのシーンでそこに錨をおろして、太い鎖で引きこんでくれる。そんなことを期待してしまうのだ。


過去戦隊に全く興味がなくても、『ゴーカイジャー』は単体での魅力がちゃんとしているから安心して見始めてほしい。ほんの少しでも特撮に興味を持てる可能性があるなら、今こそ、自分の中にある思いがけない宝物を探しに行こう。

宇宙海賊現る