【プレイ感想】ボードゲーム「東海道」―一番良い旅行体験をするのは、私だ

ここ2週間くらい色々な人から同じ話を聞く。「家から出られなくてつらい」
ちゃんと自粛している人ばかりで大変結構なのだが、理解はできかねる。旅以外は基本インドア趣味な自分にとっては全く辛さはない。家での楽しみ方なんていくらでもあるのに…。映像作品を見まくっているだけで休みの日は十分に時間が過ぎていく。


でもそういう仲間がいるなら、と思い旅に出ることにした。



もちろん在宅で。

東海道 ボードゲーム 5周年記念版 Tokaido 5th Anniversary Edition [並行輸入品]

『Tokaido』へ。


ボードゲームだ。実際にはもちろん対面は不可能なので、ボードゲームアリーナ、というブラウザで楽しめるサイトを活用させてもらった。Twitterはこういう情報が流れてくるからありがたい。

ja.boardgamearena.com


何の気なしに選んだこのTokaido、戦略的に頭を使えて脳内物質がドバドバ出るし、キャラクター性もあって想像力も掻き立てられて大変好みだった。

こんな興奮を詳細に記しておきたいと思う。
どんなゲームかを端的に表すと、「東海道を旅する中で一番良い旅できるのだ~れだ」というもの。止まったマスで行うことで良い旅の度合いを表す旅行点を得ていく。
詳しいルールはボードゲームアリーナからも公式で説明に飛べるwikiを見てもらうとして、何がそんなに興奮できたのか、という話だ。

東海道 - BGAうぃき【4/16更新】 - アットウィキ


良い旅をするのは、私だけでいい…

ボードゲーム経験の浅い自分にとって、数多く並んだマスはすごろく的なものを想像させる。しかし、このマス、チェックポイント的な「宿場」までの間はどのマスを選んでもいいのだ。飛脚か?というレベルで次の宿場に急ぐこともできれば、すべての景色を楽しむ各駅停車的な旅もできる。なるほど、旅の楽しみ方はそれぞれだ。そういったことも再現されるのだな…と思いきや。移動に関してもう二つのルールがある。「同じマスにとまれない」は一般的だが、そこに「一番後ろのマスにいる人から順番が回ってくる」というルールが加わったとき、途端に旅は殺伐とした試合になる。お分かりだろうか?とまりたいマスに誰かが居座ったとしよう。ぜひともどかしたい。どいてほしい。だがそのプレイヤーがどいてくれるのはいつだ?「一番後ろのマスにいる」状態になったときだ。一番後ろになるまで、どかない。つまり、誰かがとまった所はたとえどんなに魅力的な旅スポットであったとしても泣く泣く見送るしかないのだ。その気分たるや、間違えて乗ってしまった快速電車。事前チェックした観光地の謎の休業。満席で入れない飲食店を通り過ぎるあの感覚が押し寄せる。そして思うのだ。あいつはどうやって良い旅にするつもりだ?そうはさせない、と。

個性に合わせた「良い旅」戦略

戦略的な部分はそれだけではない。個性の異なる「旅人」を選ぶシステムがまた飽きさせない。「芸者」「役人」など、江戸時代の旅行ブーム(東海道ではお伊勢参りはできないが…)さながら様々な人物が往来する。職業ごとにことなる特性によって、「良い旅」にする方法に向き不向きが生じる。お土産を買いやすくなるもの、景色を見ることを制覇しやすいもの…自分も相手も、得点を稼ぐ戦略、妨害する戦略を変更する必要があるのだ…。


なかでも昨日猛威を振るったのは「宮司・寛忠」。寺社仏閣への寄付が最も多い旅人には最後に大きな得点が追加されるのだが、さすが神社のもの。寄付すると他の旅人よりも霊験あらたかだ。
そんな戦略面でも楽しい旅人システムだが、名前もついているから何度も使われているとなんだか愛着がわく。様々なドラマを生んでくれたのが「孤児・五月」だ。彼女は宿場でお金を払うことなく割と高得点になる食事をいただくことができる。その能力の時点で助けてあげたいビジュアルが想像されてドラマチックなのだが、システムのせいで様々なドラマを生む。


宿場には全員とまるため、食事点は得やすいように思えるが、お金を他のことに使ってしまうと食べられないケースが頻発する。そうして何も食べずに東海道を駆け抜ける修験者のような旅人たちをわき目に、彼女はすべての職場で無料で食べ続ける。そして、最後にその旅はこう評価されるのだ。「最も高額な食べ物を得た者―美食家」と。まかないレベルじゃないものを無料で食べ続けるわけだ。なんとうらやましい。


一転、五月は自分で食べたいものを選ぶことはできない。ランダムで1つもらえるにすぎないのだ。だが宿場での食事は、いい旅のための食事。全プレイヤー共通して「二度同じものは食べられない」。だから五月は無料で与えられた食事に対してこういうのだ。「前の宿場で食べたものを食べるなんて、旅にはもったいない話です」。おなかをすかせているはずなのに。そんなことを言っている場合か!いや、幼いながらに持っているのだ。旅人の矜持というものを。


みなさんも五月ちゃんに色々な美味しいものを食べさせてあげてください。